調査レポート

地方自治体が今、都市部の人材に求めているもの ~3つのデータが示す共通点

1.地方創生は「助言」から「実行」へ

地方自治体が都市部の民間人材を求める動きは、この数年で構造そのものが変わってきた。かつての地方創生施策では、専門家が月に数回訪問して助言する「アドバイザー型」の関わり方が主流だった。しかし現在、①内閣官房・内閣府「地方創生人材支援制度」、②総務省「地域おこし協力隊」、③自治体の業務委託プロポーザル公募、という3つの異なる制度・公募情報を横断して見ると、共通して浮かび上がるのは「現場に入り込み、自ら手を動かして成果(KPI)を出せる人材」への需要である。

2.データ1:地方創生人材支援制度 ―― デジタル人材が民間派遣の8割

令和6年度、全国32都道府県88自治体に対し、国家公務員・大学研究者・民間専門人材あわせて117名が派遣された。このうち民間専門人材は102名(77自治体)で、その内訳は次の通りである。

区分派遣先自治体数派遣人数専門領域
各種専門人材11自治体12名産業振興、ブランド戦略、広報、観光、健康福祉等
グリーン専門人材9自治体9名再エネ導入、ゼロカーボン、地域脱炭素施策
デジタル専門人材59自治体81名自治体DX、スマートシティ計画、庁内システム刷新

民間派遣全体の約8割をデジタル専門人材が占める。自治体DXを推進できる人材の不足が、いかに深刻かがうかがえる数字である。

実際の派遣先では、CIO/CDO補佐官やデジタル化推進アドバイザーといった役職で、窓口業務のBPR(業務プロセス再設計)やRPA導入、スマートシティ構想の基本計画策定支援などが担われている。広報・シティプロモーション分野では、自治体公式SNSの運用見直しやプレスリリース戦略の構築、産業振興分野では地場特産品のブランド化や地域商社の設立支援が実例として挙がる。

制度側が評価する企業の傾向として、「単なる助言にとどまらないハンズオン型の伴走支援体制」「自社の技術・導入実績の保有」「副業・兼業人材を柔軟に組み合わせられるマッチング力」の3点が挙げられている。

3.データ2:地域おこし協力隊 ―― 求められるスキルが「作業」から「実務」へ

総務省の最新統計によると、令和6年度の地域おこし協力隊員数は7,910人(前年度比+710人)で過去最多を更新した。取組自治体数は1,176団体、全国の受入可能自治体(1,461団体)の約8割に及ぶ。隊員の年齢構成は20〜30代で64.2%を占め、若年層の移住・貢献意欲が主流であることが読み取れる。

移住・交流推進機構(JOIN)の公式募集情報から見える近年の傾向として、募集職種は次のようにカテゴリ化できる。

カテゴリ頻出職種求められるスキル
AI活用・DX推進地域DX推進隊員、デジタル活用支援員BPR経験、生成AI等の基礎知識、住民への操作指導力
広報・SNS・ブランディング情報発信スペシャリスト、地域ブランドプロデューサーSNS運用実績、動画編集、Webデザイン
観光・宿泊・飲食観光DMOスタッフ、ツアーディレクター企画力、ホスピタリティ、イベント運営実績
農業支援・6次産業新規就農研修生、特産品開発アドバイザー商品開発・パッケージデザイン、販売チャネル開拓力

かつての「単純作業主体」の募集から、都市部の実務で培われたWebマーケティング・デザイン・デジタル活用力を求める公募へと明確にシフトしている。

任期後の定住者(直近5年で4,477人)の起業分野を見ると、飲食サービス業(279名)、クリエイティブ業(203名)、宿泊業(187名)、小売業(172名)が上位を占め、地域資源を活かした事業化の成功パターンが定着しつつある。

4.自治体プロポーザル ―― 「実績」で問われる時代

自治体の業務委託プロポーザル(公募型企画競争)でも、同じ傾向が見て取れる。

三重県が公示した「AI移住相談サービス導入事業」では、24時間対応のAIチャットボットによる移住相談窓口の構築が求められ、参加資格として「同種のAIチャットボットシステム構築・運用実績」が明記されている。佐賀県の「福岡県向け広報業務委託」では、特定ターゲット(子育て世代)への訴求実績と、相談コンバージョン等の定量的な効果測定ノウハウが提案要件となっている。

全国のプロポーザル公告を横断すると、共通して求められる実績要件は次の3つに整理できる。

  1. 官公庁との直接取引実績(過去3〜5年以内、同種・同規模の業務委託の履行実績)
  2. 同種業務の運用実績(特にAI・IT分野では稼働率・満足度等の定量成果の提示)
  3. 体制・セキュリティ要件(PM配置、プライバシーマーク・ISMS認証等)

「提案が優れているか」だけでなく、「その実績を本当に持っているか」が問われる。

まとめ:都市部人材に求められているのは「実行・伴走型ソリューション」

3つのデータに共通するのは、地方自治体が求めているのが助言者ではなく、現場に入り込んで成果を出す実行者だという点である。

  • AI/DX分野:BPR経験・生成AI活用スキルを持ち、住民や職員に直接指導できる人材
  • 広報・シティプロモーション分野:SNS運用実績と、効果測定まで含めたPR設計力
  • 産業振興分野:地場産品のブランド化・6次産業化を伴走支援できる実務力
  • 観光分野:地域資源を活かした体験型コンテンツの企画力
  • 移住定住分野:相談窓口の設計から定住・起業までを一気通貫で支援する力

上記結果を、現在私が活動している自治体の肌感覚での状況と照らしあわせてみると、確かにその通りであり、また地域おこし協力隊については各分野を担当する人材がいる・いたという実感がある。各分野はそれぞれの分野に分かれているが、相互関係・シナジーを発揮する事でもっと大きな成果や地方創生につながると考えられるが、すべてを統括・連携するプロジェクトマネジャーの不在により、長期的かつ持続的なプロジェクトの推進については、実現できている事例は少ないのではないかと考えられ、AIの活用が大きな鍵であると私は考えています。

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Yu Kanouchi

Yu Kanouchi

地方創生プロジェクトマネジャー

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