1.「デジタル人材が足りない」の中身
地方自治体が都市部の人材に求めているものの8割近くがデジタル・DX分野だという数字を紹介した。では実際に、自治体側は何に困っていて、何ができれば「助かった」と言えるのか。今回はそこを自治体の公表資料から具体的に見ていきたい。
総務省・自治体DX推進協議会の調査(41都道府県・133自治体回答)によると、自治体の78.2%がすでに生成AI活用に着手している。都道府県・指定都市に限れば導入率は100%だ。一方で、その他の市区町村では45.6%にとどまり、規模による差が大きい。
導入が進んでいる自治体でも、最大の課題として挙がるのは技術そのものではない。「職員のリテラシー(活用スキル)不足」が82.7%と突出し、次いで「個人情報・機密情報の取り扱い」(63.2%)、「利用ルール・ガイドラインの未整備」(40.6%)が続く。さらに95.5%の自治体が「文書・ファイル管理に課題がある」と回答しており、「ファイルサーバー容量の逼迫」(67.7%)「目的のファイルが見つからない」(65.4%)が実態として挙げられている。
つまり、自治体が抱えているのは「AIが使えない」という問題ではなく、「AIに読み込ませるデータの土台が整っていない」「使いこなせる人が庁内にいない」という、地味だが根の深い問題である。
2.数字で見る「AI活用の効果」
一方で、実際に導入した自治体では相応の成果も出ている。総務省調査によると、RPA導入による業務時間削減効果は平均64.8%、定型的なデータ入力業務では82.3%に達する。
- 大阪府豊中市:83業務にRPA・AI-OCRを導入し、年間約10,900時間を削減
- 新潟県長岡市:庁内7課18業務で年間4,136時間(削減率87.9%)を削減
- 愛知県日進市:生成AIによるVBA/マクロコード自動生成で累計約4,250時間の削減見込み
- 滋賀県野洲市:生成AI(RAG構築)による議会想定問答作成で、答弁作成プロセスの最大96%に活用
活用用途の上位は「あいさつ文案作成」「議事録要約」「企画書案作成」「メール文案作成」など、いわゆる文章作成・整理業務が中心だ。派手なシステム刷新より先に、日々のテキスト業務の負荷を下げるところから成果が出ている。
3.求められる人材像は「翻訳者」
総務省の「自治体DX推進のための外部人材スキル標準」を見ると、求められているのはIT専門知識だけではないことがわかる。むしろ強調されているのは、IT専門用語を行政職員や住民が理解できる言葉に置き換える「翻訳・コミュニケーション力」、現場の抵抗感を丁寧に解消しながら業務改革へ巻き込む「合意形成力」だ。
加えて、単年度会計主義や起案・決裁のプロセス、個人情報保護条例といった行政特有の制度理解(行政ドメイン知識)も欠かせない。技術力だけを持つ外部人材が現場で機能しにくいのは、この行政ドメイン知識の壁があるからだと言える。
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